必読!『誰が世界を支配しているのか?』ノーム・チョムスキー著/双葉社 (後編)

さて、続きです。

チョムスキー先生は、解説します。
第二次世界大戦後の米国が描いた、米国による世界統治、「大領域」(グランドエリア)の絵図面、そして、なぜアジアや南アメリカ独裁政権が力を握ったのか、なぜ「アラブの春」は失敗し、それらの国々で民主主義はうまく根付かないのか。
そして、米国は(そして民主主義世界にいるとされる国々は)本当に民主主義なのかどうか。

このあたりのさまざまな情報は、ほとんどがわが国でも報道されていて、ひとつひとつのニュースを見れば
「そんなこともあったなあ」
と思い出すのですが、列挙してチョムスキー先生の怜悧なフィルターを通し、まとめるとそれはそれはコワイ。
このあたりぜひ、本書を実際に手に取って、味わってみていただきたいのです。

決して、読んで楽しい本ではありません。読むのが嫌になります。
こんな世界で生きていることも嫌になってきます。いやほんと。

ですが、これはやっぱり、読んだほうがいい。「必読!」なんです。
なぜか。

私はもう長いこと、政治がうまく機能しなかったり、国民の格差が広がったり、公的な教育の質が落ちているようなのは、世の中の仕組みが複雑になって、政治家も官僚も最善の方法を見つけることができないからではないか。
それだけ政治が難しい世の中になったんじゃないか。
そう考えていました。

そうじゃなかったんだ。
前からうすうす感じていたことが、本書を読んで確信に変わったわけです。
これが彼らの目指した世界なんだ。政治は本当は(あのアメリカですから)「民主主義」が大嫌いなんだ。
知的レベルのあまり高くない、仕事はほどほどにできるけれども、黙って政治に従うロボットのような国民を育てたいだけなんじゃないか。
そしてそれは、ほぼ完成に近づきつつあるんじゃないか。
だからこそ、自民党憲法改正草案には、「国民の責務」として「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し」などという妙な節が付け加えられているのではないか。
国民に、自由にものを言わせたくないのではないか。
「おまえら、黙っとれ」
彼らは、本心ではそう言いたくてうずうずしているんじゃないか。

「深読みのしすぎだよ」そうおっしゃいますか?
それとも、「そんなこと、昔からわかってたじゃん」。そうおっしゃいますか?

森友問題で、死者が出ました。
国民の目の届かないところで、公文書の偽造(書きかえなんて生ぬるい、偽造です、偽造!)という驚くべき事態が起きたうえで、公僕が自殺したというんです。これはひどい。これはあまりにもひどい。
本件は、われわれの民主主義に対する挑戦だと私は考えます。

本書『誰が世界を支配しているのか?』は、世界を今までとはまったく異なる角度から読み解くための、ヒントをくれます。
ぜひ、ご一読を。
怒りの福田でした。